妊娠中の適切な栄養摂取は、胎児の健やかな発育に欠かせません。特に「亜鉛」は、赤ちゃんの脳の発達や認知機能に深く関与する重要なミネラルとして再注目されています。
亜鉛は、神経細胞の成長やシナプス形成、神経細胞同士がスムーズに情報をやり取りできるようにするための“信号の通り道”がしっかりと作られることを助けます。これらのプロセスは、子どもの神経発達の基盤となるものです。
しかし、世界的に見ると、約17%の人々が亜鉛の摂取不足のリスクにさらされていると報告されています。特に妊娠中の女性は、胎児の成長と自身の体の変化に伴い、亜鉛の必要量が通常の2倍に増加するとされています。そのため、妊娠中の女性が亜鉛不足に陥るリスクは高く、注意が必要です。
最近の研究では、妊娠中の亜鉛摂取量と新生児の脳発達との関連性が調査されました。この研究には、コロンビア大学医療センターとワイル・コーネル医科大学から41人の若年妊婦が参加しました。彼女たちは妊娠中に3回の評価を受け、特に妊娠後期における食事内容が詳細に記録されました。出産後、生後3週間の時点で新生児の脳をMRIでスキャンし、その後、ベイリー乳幼児発達検査を用いて認知機能の評価が行われました。
結果として、妊娠中の亜鉛摂取量が多い母親から生まれた赤ちゃんは、脳の特定の領域、特に感覚情報の処理や運動機能に関連する部分の体積が増加していることが示されました。これらの領域の発達は、将来的な認知機能や運動能力に影響を与えると考えられています。
この研究は妊娠中の亜鉛摂取が新生児の脳発達に多面的な効果を持つ可能性を示唆しています。したがって、妊娠中の女性は、亜鉛を豊富に含む食品、例えば肉類、魚介類、全粒穀物、ナッツ類などを積極的に摂取することが推奨されます。また、食事からの摂取が難しい場合は、医師や栄養士と相談の上、サプリメントの利用を検討することも一つの方法です。
適切な亜鉛の摂取は、赤ちゃんの健やかな脳の発達をサポートし、将来的な認知機能の向上にも寄与する可能性があります。妊娠中の栄養管理は、子どもの未来への投資とも言えるでしょう。
※出典:
Nutrients 2025, 17(2), 303
Associations of Maternal Prenatal Zinc Consumption with Infant Brain Tissue Organization and Neurodevelopmental Outcomes